全体を通しての感想
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mid90sは、アメリカの映画製作・配給会社であるA24の元で作られた映画です。A24は近年話題で「ミッドサマー」や「ヘレディタリー/継承」などの映画も作成しています。
私は、A24の映画が好きだったので見てみました!
mid90sは、90年代アメリカのロサンゼルスを舞台に、10代の少年に焦点を当てた青春映画です。
16㎜のフィルムに、乾いた質感で描かれる思春期真っ只中の少年の青春時代は、どこか懐かしい気持ちになりました。
そんな懐かしさと同時に
・『大人になること』のゴールとは
・今の自分は果たして『大人』になれているのか
を見つめ直すきっかけとなりました。
青春映画とは一言では言い切れない映画です。
強い人達にくっついて、自分も強く見せたい時も
自分が弱いことを分かっているけど、大きく見せる為に見栄を張っちゃう時もある。
本映画は幼少期ということで描いていましたが、大人になっても言えることなんだろう。
【私】の子供らしい部分を生々しい質感で、まじまじと見せつけられたような感じがします。
もっと大人になって、もう大きい穴を飛び越えようと思わなくなったときにもう一度見たい映画です。
いつか「危なっかしい時期があったな」そう思える日が私にも来るのでしょうか。
あらすじ(ネタバレ注意!)
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主人公のスティービー(のちサンバーンと呼ばれます。)は、兄から暴力を受けており、過保護な母親の元で、外界となかなか関わりを持つことができません。
彼の世界は、家の中がすべて。
そんな時、兄の部屋にこっそり入り、90年代のカルチャーに興味を持つようになります。
彼は「クール」に憧れを持ちました。
そんな中でも彼を焚き付けたのが「スケートボード」
このスケートボードをきっかけに、スティービーはいわゆる『不良』達と仲良くなります。
プロのスケートボーダ―を目指す「レイ」
女と酒におぼれるが、優しい心を持つ「ファックシット」
カメラを常に持ち、映画監督を夢見る「フォースグレード」
家族から虐待を受けている「ルーベン」
彼らの中にスティービーはようやく居場所を見つけ、『スケートボード』と『彼ら』にのめり込むようになります。
スティービーにとっては、彼ら4人が自分の『憧れ』
彼らに近づきたいと、徐々にスティービーにも変化が見れらます。
酒、タバコ、ドラッグに手を出す、まだまだ子供のスティービー。
母親からは、「そんな友達と遊ぶのはやめなさい」と忠告を受けますが、
反抗期に入ったスティービーは、それを無視してよりのめり込むようになります。
そんな中、彼ら5人にある事件が起き…
そんなお話。
min的感想
自分を大きく見せたい
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スティービーは13歳。まだ中学1.2年生あたりでしょうか。
学校に行く描写は書かれませんが、彼にとってはレイ・ファックシット・フォースグレード・ルーベンの4人がスティービーの世界のすべてになっていきます。
彼ら4人の歳は高校生あたりでしょうか。
スティービーにとっては、彼ら4人はたとえ高校生でも『大人』なんです。
そんな4人の大人に『憧れ』を抱き、同じ行動をとるようになります。
これは『いいか』『悪いか』じゃないんです。
『誰にだって、「自分より強い人に憧れを抱いて、仲間になりたい」そんな時期はあるよね』
それを監督は描きたいのだと思います。
だってまだ、
「強い者」に憧れを抱いて、それを味方につけることで「自分を強く見せたい」
そんな気持ちがどこかに残っている気がするから。
財布からお金を取ったり、未成年でたばこを吸ったり。
まだまだ子供でかわいいな。と思う場面もありましたが、
『ステータス』を環境に頼るという部分では、自分の根本の部分を生々しく見せつけられているようでした。
しかし、これは私にのみ言えることなのでしょうか。
大人になっても、『会社のレベル』『パートナーのレベル』など、『自分自身』ではなく、自分を取り巻く環境を『ステータス』として誇る人は多いはず。
mid90sで、『自分を大きく見せようと、回りの環境に憧れを抱く』のを子供と指すのであれば、
まだまだ私達は『体だけ一人前に大きくなった子供』なのではないでしょうか。
自己嫌悪
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映画の中で、スティービーや兄が自己嫌悪に襲われるシーンが何度かあります。
中でも印象的なのが、酔っぱらって帰ったスティービーが、兄に暴言を吐くシーン。
友人の家で、酒やドラッグを楽しみ家に帰ったスティービーは、兄に怒られます。
それに対してスティービーは
「友達も女もいない、弱いやつだ!」
と言い返します。
それに対して兄は、より怒りスティービーを殴りますが、突然泣き出します。
この時兄は、自分が憧れている場所にいるスティービーに、本当は弱い自分を見透かされたようで悔しく、
自分を大きく見せたいがために、自分よりも体の小さい、弱い弟のスティービーに暴力をふるっていることに対して、自己嫌悪に陥ったのだと思います。
そんな兄に対して「弱いやつだ!」と暴言を吐いてしまったスティービーは、コードで首を絞める自傷行為を起こします。
スティービーも、本当は兄にたいしてそんなことを言いたくはなかったのでしょう。
それを言ってしまった自分に腹が立って、自己嫌悪に陥り、首を絞めたのだと思います。
また、スティービーも兄と同じで、憧れている強い人たちの周りにいることで自分を大きく見せているだけで、決して自分が強いわけではない。ということに気づいたのかもしれません。
自分が起こしている行動が、ふとした時に嫌になり、自己嫌悪に陥ることは誰にでもあります。
けど、その状況を抜け出せない。または、もう気づいた時には遅かった。
そんな悪循環から人は自己嫌悪に陥るのかもしれません。
そんな誰にでもある『自己嫌悪』が、彼らの青春の中で印象的に表現されていました。
友情
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スティービーは、この5人のグループの中でも最年少です。
他の3人(ルーベンを除く)はスティービーをサンバーンと呼び、弟のようにかわいがっていました。
中でも忘れないのが、レイとスティービーの関係性です。
レイはスティービーにボードを作ってあげたり、
親と喧嘩したことで、家に居場所のなくなったスティービーを滑りにつれて行ったりします。
まるで本当の弟のように可愛がっています。
実は、レイは、弟を交通事故で無くしていました。
スティービーも同じく、兄から暴力を受けていたことから、お互いの穴を埋める為に互いを必要としていたのかもしれません。
しかし、そこには友情にも勝る『愛』を感じました。
また、ファックシットの運転による交通事故で一人だけ重症を負ったスティービーを、朝まで待つ彼ら4人の姿にも強い友情を感じます。
目覚めたスティービーの病室に4人は訪れますが、レイはスティービーに対して
「一番、悲惨な体験をしているな。その必要ないだろ?」
そう告げます。
スティービーは、家もちゃんとしていて帰る場所がある。
でもレイたちには帰る場所がないから、ここにいる。
レイは弟のように可愛がっていたスティービーをここで手放す覚悟をするのです。
「お前の本当の居場所はここじゃない。」
そう感じたのでしょうか。
そして、フォースグレードが撮っていた過去の映像を5人で見返し、映画は終わります。
リアルタイムで過ごしていた日々が、この映像をみんなで見ることで、過去に変わる瞬間です。
傷つき、揺らぎやすい青春をみんなで過ごし、それを過去に変えた。
この映像で映画は終わりますが、青春を過去に変えたことで、個人的にはこの後あの仲間はもう集まることもなくなってしまった。そんな風に想像しました。
まとめ
青春時代というものは、人それぞれ持っていると思います。
その青春時代を懐かしむこともできますが、さらに自分を振り返るきっかけにもつながる映画だと思います。
色褪せているが、どこか鮮やかな青春時代を、ぜひ自分の目で見て欲しい映画です。
では次のコラムもお楽しみに!
こんにちは。Fiache.編集部のminです。
minの映画だべり第6回は「mid90s」についてです。
映画初心者が、好き勝手お話していくので、ゆる~くご覧ください!映画のあらすじ等にも触れていくので、ネタバレ注意です。