「花束みたいな恋をした」について
私は普段、あまり恋愛映画を見ません…。「花束とみたいな恋をした」は、配給会社が東京テアトルということで、見に行ってみました!
結論、見に行って大正解でした…!
恋愛映画って、「恋」を綺麗に描きすぎて共感できない部分が多いイメージがあったんです。でもこの映画は、一つ恋の始まりから終わりを飾らずに真っすぐに描いている映画だったので「見に行って良かったな。」と思いました!なんならもう一回見たい…。
「長い間同じ人と付き合っていた人」や「同棲期間を経て破局してしまった人」は、もちろん共感できると思います。
しかし主人公たちのような恋愛をしてこなかった人でも、映画を通して彼らに自分を重ね、共感できる部分がたくさんあります。
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さらにこの映画には「サブカルチャー」がたくさん登場します。映画、音楽、本など、サブカルチャー好きの人も、見ていて面白い部分がたくさんあります。
映画の構図や間の取り方など監督のこだわりがひしひしと感じられる部分があり、これらが一つ一つの場面に厚みを持たせています。
「花束みたいな恋をした」このタイトルもとても秀逸で、人によってとらえ方を変えることができるようになっているのではないかと思いました。
どんな人でも自分と重ねることができる映画だし
「恋愛」の難しさや「変わってしまうこと」の悲しさ、どうしようもできない現実に胸があつくなる映画です。
あらすじ
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冴えない学生生活を送っている「絹(有村架純)」と「麦(菅田将暉)」。彼らは、東京・京王線 明大前駅で終電を逃したことをきっかけに出会います。彼らは映画や本などの趣味が驚くほど同じでした。そしてお互いの趣味を語りあうことで心の距離を詰めていきます。
2人は何度かのデートを重ねて、付き合い始めます。そして駅から徒歩30分、多摩川が見える広いベランダがある部屋で同棲を始めました。
2人は一緒に暮らしていく中で幸せな日々を過ごしていきます。2人で同じ漫画を読んで泣いたり、初詣の時に拾った猫に「バロン」と名前を付けたり、クリスマスにプレゼント交換した物がお互いブルートゥースのイヤホンだったり。趣味が同じだからこそ、共有し合えるたくさんの思い出を作っていきます。
まだこの時、絹と麦はフリーターでした。麦は得意であるイラストを仕事にしたい、と日々奮闘しています。しかし、2人で生活していくにはお金が必要です。そこで2人は「社会に出ること」を決心します。
絹は簿記の勉強を始め、クリニックの事務職に就きました。一方麦は就職活動がうまくいかず、苦悩の日々を送りますが、無事に小さな会社の営業職に就くことができました。しかし、麦の就職をきっかけに2人の日々に小さなほころびが生まれはじめ、やがて2人は…。そんなお話。
感想
この映画、本当にすべての表現が良かったんです。もう言葉に表せないほど良かった。語りたいことがたくさんでできてしまい、整理するのに精一杯でした。誰か今度一緒に語ってください…。涙
min的感想
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基本的に、日記のように話が進んでいきます。絹と麦のナレーションも多く、見ていて心地よいスピード。この話の中では「主人公は大きな病気にならない」し「世界が終わること」もありません。恋人の日常が淡々と描かれていきます。だから別れるきっかけも、大きな事件があるわけではないんです。だんだんと変わってしまった2人の気持ちが、だんだんと離れていき、もう取り戻せないほどの溝が生まれてしまう。リアルですよね。だんだんと離れてしまったから、もう元通りになる方法もないんです。どっちが悪いとか、何が原因とかがない。もう仕方ないことんですよね。
最後のファミレスのシーンで、麦は「やっぱり別れるの、やめよう。2人で過ごす未来想像できるよ。夫婦ってこう言うものなんだよ。結婚しようよ。」を言います。それに対して絹は「幸せのハードルを下げるのは違うよ。」と拒みます。
ふと、別の席(以前二人が良く使っていた席)に目をやるとそこには初々しい男女の姿が見えました。まさに、絹と麦が出会った時のような男女。趣味の話で盛り上がり、嬉しそうな、幸せそうな2人がそこにはいました。絹と麦はその2人を見て、自分たちのあの頃を思い出しました。
だからこそ、別れることを決心したんです。絹と麦も、最初は2人でいる世界が楽しくて仕方がなかった。でも時間が流れることで、もうその関係はなくなってしまった。必然的に。摘みたての花が一番綺麗で、その花が枯れてしまうのも必然です。それと同じ。2人が付き合った時の熱量はもうなくなってしまったけど、ハードルを下げてまでも2人で一緒にいるのは違うんだって、2人は気づいたんです。枯れた花を、無理やり花瓶に飾りづづけるのは違うんです。
絹は付き合い始めた時、「始まりは終わりの始まりだ。恋には賞味期限がある」と思っていました。それが必然的に訪れてしまったんです。
このシーン、もう腰から砕け落ちるほどに泣きました。過呼吸レベル。かなしいけど、嫌な終わり方ではなかったです。必然だからこそ別れとすんなりと受け入れることができて、むしろスッキリと終わることができました。
冒頭にも書きましたが、日記のように1つの恋が始まってから終わる流れをまっすぐに描いていた映画で、綺麗事がないからこそ、逆にほんとうに綺麗な映画でした。この映画に出会えて本当に良かった…。
変わってしまうものの悲しさ
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就職を経て、忙しくなった麦はどんどん変わってしまいます。「2人でやろうね。」と言っていたゼルダはゾーラの里から進まず、ゴールデンカムイも7巻で止まってしまいます。仕事で忙しい麦が今しているのはパズドラ。映画とか本などに集中することができなくなり、突発的に楽しめる携帯ゲームしかやる気が起きなくなってしまっていたんです。麦がパズドラしか集中できなくなってしまった現実には恐怖さえ覚えました。「仕事にしたい。」と頑張っていたイラストを書く道具も今は、棚の奥に追いやられています。
「昔みたいに映画とか見に行こう。なにかしてほしいことある?」この麦のセリフ。もう怖すぎませんか。どんどん変わってしまう麦。けど、彼は自分が変わっていることに気づいていないんです。「社会が彼を変えてしまった。」そう言うと「社会が悪い」と言ってしまうようで、嫌なんですけど、これも必然なのかもしれません。
麦は、絹との生活のためだ。と言って自分の趣味を殺して働いていますが、果たしてそれは2人にとって本当の幸せだったのでしょうか。結果的には2人は別れてしまうわけですから、2人にとってはそれが本当の幸せではなかったんですよね。
社会に出て精一杯になってしまうことは、仕方ないことです。でもそのせいで、自分の一番大切な人との時間さえ無くしてしまった。悲しいし、切ないことです。やり切れなさが残りました。
サブカルチャー好きには刺さる
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映画って、架空のアーティストとか架空の場所が多いイメージがありますよね。でもこの映画は、「Awesome City Club」とか「きのこ帝国」とか「押井守」とか「天竺鼠」とか実際のアーティストや映画を出してくれるから、リアリティがより増します。現実からかけ離れないで、まるで友人の恋の話を聞いているみたいでした。
特に、2人が麦の家に向かう途中「350㎖の缶ビールを買って」「2人で夜の道を歩く」シーンは興奮しました。「クロノスタシスって知ってる?」「しらなーい」あぁ…。なんて美しい会話…。(伝われ)
さすが坂本裕二さん…。
この映画は「東京ラブストーリー」や「最高の離婚」「カルテット」「いつ恋」などのドラマ脚本をしていた、坂元 裕二さんが脚本を務めています。さすが坂本さん!と言わんばかりの台詞表現で、その言葉一つ一つが胸に刺さります。
「コンセントがギリ届いて、私の濡れた髪を乾かし始めた」
「その人はきっと今村夏子さんのピクニックを読んでも、何も感じない人だよ」
「猫に名前を付けるのは、最も尊いことの1つだ」
「男の人は女の人から花の名前を教えてもらうと、その花を見る度に思い出しちゃうんだよ。」
「2014年のW杯の開催国であったブラジルが,準決勝でドイツに歴史的大敗をした時のブラジル国民に比べたら、辛くない」
もう数え切れないほどの名台詞ばかりですが、どうしてか私の心に残っているのが「カラオケ屋さんに見えないカラオケ屋さんに行きたいです」という絹のセリフです。こんなに回りくどい言い方なのに、それが余計に奥ゆかしさを持たせていて「こんな表現ができる坂本さん…。さすが…。」って思っちゃいました。他にも、バタートーストの話とか、じゃんけんの話とかも好きです。(分かる人には分かる)
バロン(猫)の引き取り先を決めるじゃんけんで、麦がパーを出して勝つあたりも、きっと坂本さんの意図があるんだろうなあ。と思いました。あんなに「紙が石に勝つのは、おかしい」って言っていたのに、パーで勝つ。変わってしまった麦を描いているんだろうな。と思いました。
2人の演技力
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この映画は有村架純さんと菅田将暉さんの2人がメインです。私の主観ですが、恋愛映画って主人公がキラキラしすぎてるイメージがあって感情移入できなかったんです。でもこの2人にはそれがなかった。キラキラしていない、って言っているんじゃないんです。いい意味で「よくいるカップル」だし「一般人」を演じられていました。これは2人だからこそできる演技だったと思います。
特に覚えているのが、絹と麦が喧嘩したシーン。「またか。って顔した。」「またか。とは思うよ。またかだから。」このシーンの菅田将暉さんのあきれた顔!眉毛をちょっとピクっとさせるあれ。あれが演技でもできるっていうのがすごい。見ていて、「うわ。あの顔されたら絶対怒る。」ってイラっとしてしまいました。(笑)
さらに、最後のファミレスで麦が泣き出すシーン。あれ実は予定より早く泣いてしまったらしいです。演じている中で感情が高ぶって涙が出てきたと、パンフレットで知りました。あのシーン、思い出すだけで泣いちゃいそうくらい、いいシーンだった。
やっぱりあの2人じゃなかったら、こんなに心に残る映画じゃなかったと思います。さすがです。スタンディングオベーション。
対比の構造
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この映画には、対比される場面が多く登場します。私は一番忘れられないのが、靴のシーン。同棲したての家の玄関には、偶然同じだった白のスニーカーが仲良く並んでいます。まだ心を通わせている2人を描いているシーンです。数年たつと、2人の靴は黒のパンプスと、革靴に変化していました。2人の心の距離が離れている状況を、暗に感じてしまい、心が辛くなりました…。
他にも、付き合うきっかけになったファミレスが別れの場所になったり、初めてキスをした横断歩道の前で、別れを決めるハグをしたり、付き合う前に2人で歩いた麦の家まで歩く道を、別れた後に2人で歩いたり…。数え切れないほどの、心が「離れる前」と「離れた後」の対比がされています。その対比のせいで(おかげで)別れが色濃く印象に残る構造になっていました。
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変わってしまう麦と、変わらない絹。主人公にも大きな対比がされていました。複雑な伏線などがなく、真っすぐに直線上に描くことで、主人公たちに誰でも感情移入できる映画になっているのだと思います。
タイトルの意味
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「花束みたいな恋をした」このタイトル、皆さんはどんな風に捉えましたか?
この映画を見た友人などに聞いたら、
とか
とか。
すごいですよね。映画のタイトル一つで、それぞれによって抱く意味が変わってくるんです。
でも私はこの花束を枯らしたり、ドライフラワーみたいに乾燥させたくないです。いつまで色鮮やかな花束であって欲しい。
私は
と捉えてみました。映画冒頭のシーン、カフェでイヤホンを分け合って音楽を聞いているカップルに、別々にそこに訪れた絹と麦が「音楽は分けちゃいけない」と言おうとするシーンがあります。このシーンを見ても、2人にとってあの恋は忘れられない思い出だし、いつ思い出しても昨日のように鮮やかに思い出すことのできる恋だったんじゃないかな。と。
はみ出し感想
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語りきれない感想をここに書きます!!!書かせて!書きたい!!
▷コピバンしてた時に、きのこ帝国もオーサムもやったから、知ってる曲ばかりでちょっぴりうれしくなった。ついつい口ずさみそうになった。
▷20代後半~30代の結婚前の人が見たら刺さるところ多いと思う。逆に、高校生とかには見て欲しくないな。キラキラした恋愛を夢見て欲しい。
▷カップルで見たら絶対死ぬ。非推奨です。
▷私もあんな素敵な部屋に住みたいな~。でも徒歩30分は明らかに遠い。
▷同棲して別れた後って、お互い家ないからちょっと一緒に暮らす期間あるよね。分かる。しかも別れた後の方がなんでも話せて、むしろ仲良くなってるんだよね。分かる。
▷大事なことって4回言うのか~。
▷絹のお父さんが「ワンオクとか聞く?チケットあるから今度2人で」って聞いてたけど、50代のおじさんってワンオク知ってるのかな?少なくとも、私の父は知らない。
▷ワンオクの話の時、麦が「聞けます」って言ってたけどワンオクも素敵なバンドやで…。聞けますって言われて少し悲しくなった。サブカルを強調したかったのは伝わる。
▷ショーシャンクの空にもいい映画だよ。
▷そもそも、他人とこんなに趣味が同じことってあるか⁉ 何もかもが一緒すぎて、ちょっと違和感あったなぁ。
▷猫、目ヤニついててちゃんと育てられているのか心配になっちゃった…。あと、じゃんけんで引き取り先決めるのちょっとかわいそう…。でもカップルでペット飼ってる時の引き取り先ってどうやって決めるのが正解なんだろう。
▷天竺鼠の単独、行けよって思ってしまった。
▷やっぱ私は有村架純だし、彼氏は菅田将暉だったわ。ありがとうございます。
まとめ
熱量が入りすぎました…。思い出すたびに本当にいい映画だったな。と。
映画のパンフレットも様々な細工があり、映画の裏話などもたくさん載っていました。映画を見た後に買ったのですが、パンフレットを見てもう一回見たい!と思ってしまいました(笑)
ぜひパンフレットも買ってほしいです!
「花束みたいな恋をした」は全国ロードショー中!ぜひご覧ください。
こんにちは。Fiache.編集部のminです。
minの映画だべり第8回は「花束みたいな恋をした」についてです。
映画初心者が、感想や意見など好き勝手お話していくので、ゆる~くご覧ください!映画のあらすじ等にも触れていくので、ネタバレ注意です。