18世紀末に独立を果たしたアメリカ合衆国。
黄金と石油に沸いた19世紀は、庶民でも成功できる可能性を秘めたアメリカン・ドリームの時代でした。
今回は19世紀を舞台にした映画を11本、年代順にご紹介します。
歴史ものというと内容が重そうに思われるかもしれませんが、中には痛快ファンタジーもありますよ。
19世紀前半
白鯨との闘い
ジャンル 伝記、ドラマ
舞台 ナンタケット(マサチューセッツ州)、外洋
年代 1819年〜、1850年
キーワード
- 帆船
- 航海
- 鯨油
- 港町
- サバイバル
あらすじ
1850年、作家ハーマン・メルヴィルは、ある宿屋を訪ねる。宿屋の主人トーマスは、過去に沈没した捕鯨船・エセックス号の最後の生き残りで、メルヴィルは彼に話を聞きにきたのだ。
頑なに話そうとしないトーマスだったが、妻の説得の末に、訥々と語り始めた。
白鯨の棲む海へ航海した過去、遭難と漂流の一部始終を。
ポイント
クリス・ヘムズワース主演、ロン・ハワード監督によって製作された映画です。
原作は歴史研究家ナサニエル・フィルブリックによるノンフィクション小説「復讐する海 捕鯨船エセックス号の悲劇」。
この小説は発売年の全米図書賞ノンフィクション賞を受賞しました。
捕鯨船の遭難事故ということで、作中では船上の描写が多くを占めますが、1819年の港の様子や、船の保険や審問会の様子なども描かれていますよ。
グレイテスト・ショーマン
ジャンル ミュージカル
舞台 アメリカ、ニューヨーク
年代 1810〜1868年頃
キーワード
- 見世物
- 恋愛
- サーカス
あらすじ
貧しい家庭に生まれ、妻子を得るも清貧な暮らしをしていたバーナム。勤め先の海運会社の倒産をきっかけに、世にも奇妙な珍しいものを集めた「バーナムの博物館」をニューヨークで始める。やがてショービジネスへ舵を切ったバーナムは、個性あふれる人々を雇い始める。
ポイント
マイケル・グレイシー初監督作品の「グレイテスト・ショーマン」は、実在の人物P.T.バーナムの半生を描いたミュージカル映画です。
主演はヒュー・ジャックマン。
力強く素晴らしい音楽の数々は一世を風靡し、アカデミー賞も受賞しました。
「グレイテスト・ショーマン」は実話に沿うかたちでストーリーが展開していきます。
とはいっても、P.T.バーナムの描写にはフィクション要素が多く、伝記よりもエンターテイメントに比重が置かれているようです。
実際のP.T.バーナムが博物館をオープンしたのは1841年。1861年から起きた南北戦争より20年も前のことです。
博物館のあるニューヨークでは1827年に奴隷解放が叶いましたが、アメリカ南部は依然として奴隷制度が残り続けていました。
それでも夜は明ける
ジャンル 伝記ドラマ
舞台 ニューオーリンズ(ルイジアナ州)
年代 1841年~1853年
キーワード
- サトウキビ畑
- 綿花栽培
- 誘拐
- 人身売買
- 人種差別
- 鞭打ち
あらすじ
ニューヨークで生まれ育った自由黒人のソロモン・ノーサップは、バイオリニストとして妻子と一緒に幸せに暮らしていた。
しかしソロモンはワシントンで行われた公演の契約期間が終了した晩に薬を盛られ、昏睡したまま奴隷商に売られてしまう。
自由黒人だとするソロモンの主張もむなしく、彼はニューオーリンズの奴隷市場へ運ばれる。
そこで農園主のフォードに買われるが、いくつかの事情からフォードはソロモンを農園主エップスへ売る。
エップスは事あるごとに奴隷を鞭打つ残忍な性格の持ち主だった。
ポイント
実在したソロモン・ノーサップによる奴隷回顧録(奴隷体験記)を、スティーヴ・マックイーン監督が映画化。
主演のキウェテル・イジョフォーをはじめ、ベネディクト・カンバーバッチやマイケル・ファスベンダー、ブラッド・ピットなど豪華俳優陣でも注目されました。
「それでも夜は明ける」では主に3つの州および都市が舞台となります。
ニューヨーク、首都ワシントンD.C.、ニューオーリンズ(ルイジアナ州)です。
北部のニューヨーク州は1799年に奴隷制度の段階的廃止を決定。1827年に奴隷は解放されることとなりました。
とはいっても、奴隷船の停泊が認められていたり、無償奉公といった実質的な奴隷制度は続いていました。
1841年当時は合衆国最大級の奴隷市場があり、奴隷捕獲人(slave catchers)は自由黒人の誘拐を躊躇うことなく行なっていたといいます。
アメリカ南部のメキシコ湾に面したルイジアナ州では奴隷制度は合法であり、また州の奴隷市場は1840年までに国内最大規模となりました。
1811年にはアメリカ最大の奴隷反乱(ジャーマン・コースト蜂起)が起きましたが、南北戦争まで奴隷制度は廃止されることはありませんでした。
レヴェナント:蘇りし者
ジャンル サバイバルドラマ
舞台 ミズーリ川沿い(ノースダコタ州およびサウスダコタ州)
年代 1823年
キーワード
- マウンテン・マン
- ネイティブ・アメリカン
- インディアン戦争
あらすじ
1823年の冬、ミズーリ川上流で罠猟をしていた毛皮貿易探検隊は、好戦的なアリカラ族に襲われた。命からがら逃げ延びたヘンリー隊は、土地に詳しい罠師ヒュー・グラスのアドバイスに従って陸路で砦を目指す。
しかしその最中、グラント川にほど近い場所で、グラスはグリズリーに襲われ瀕死の重傷を負う。グラスを連れていくのは困難であると判断したヘンリー隊長は、グラスの死を見届ける人員を2名つのる。志願したブリッジャーとフィッツジェラルド、そしてグラスの息子ホークの3人がグラスに付き添う。
早々に立ち去りたいフィッツジェラルドはグラスを殺そうとするが、グラスの息子ホークに阻止される。大声でブリッジャーに助けを求めるホーク。フィッツジェラルドは大声を上げるホークを殺害。そして翌朝、ブリッジャーを騙し、グラスを置き去りにして2人で砦へ発ってしまう。
瀕死状態のグラスは、過酷な自然とアリカラ族の襲撃から身を守りながら砦へ向かうことになる・・・。
ポイント
レオナルド・ディカプリオ主演、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督による、実話と小説を元にしたサバイバル映画です。
グリズリーに襲われ瀕死の重傷を負いながらも、320キロを武器なしで旅し生還したとされる実在の人物ヒュー・グラスの伝記は、これまで多くメディア化されてきましたが、映画「レヴェナント:蘇りし者」は、マイケル・パンクの小説(「The Revenant:A Novel of Revenge」)に基づき、映画向きに脚色も加えて作られました。
実は、実際のヒュー・グラスの来歴についてはよく分かっていません。
海賊と言われていたポーニー族と暮らしていたという説が一般的なようです。
映画で探検隊を襲ったアリカラ族は、ミズーリ川から西に伸びる支流であるグラント川河口付近に村を構えていました。
19世紀初頭に首長アンケドゥチャロがワシントンD.C.滞在中に亡くなったのをきっかけに、アメリカ白人に対して敵対的になったと言われています。
19世紀後半
ゴールデン・リバー
ジャンル 西部劇、人間ドラマ
舞台 オレゴン準州、カリフォルニア州
年代 1851年
キーワード
- ゴールド・ラッシュ
- 化学熱傷
- 復讐
- 銃撃戦
あらすじ
兄イーライと弟チャーリーは、名の知れた殺し屋・シスターズ兄弟だ。
雇い主・提督により、金の探鉱者ウォームの始末を依頼され、兄弟はオレゴン準州から南下し、ウォームを追うことに。
ウォームには既に提督の部下のジョン・モリスという連絡係が見張りについており、シスターズ兄弟と合流する手はずになっていた。
しかしモリスはウォームを気の毒に思い、提督を裏切ってウォームと共に逃げる道を選択。
その後、成り行きでシスターズ兄弟もウォームらと手を組むことになり、4人は黄金を採るための準備に取り掛かる。
ポイント
カナダで数々の文学賞を受賞した小説「シスターズ・ブラザーズ」を原作に、ジャック・オーディアール監督が製作した「ゴールデン・リバー」。
監督にとって初の西部劇となった本作は、ヴェネツィア国際映画祭の銀獅子賞(監督賞)を獲得しました。
イーライとチャーリーを演じるジョン・C・ライリーとホアキン・フェニックスの実力派コンビも見逃せませんね。
1848年から1859年にかけて存在したオレゴン準州は、現在のワシントン州とアイダホ州、ワイオミング州とモンタナ州の一部を含んでいたため、土地面積にして現在のオレゴン州の2.5倍以上を有していました。
オレゴン準州の南に位置するカリフォルニア州では1848年に金が発見され、州外から多くの人が殺到するゴールド・ラッシュが起きました。
49年の1年間だけでなんと10万人弱がカリフォルニアへ移動したといいます。
初めの頃は易々と採れた金は、人が集まるにつれ徐々に採るのが難しくなりました。
それどころか、1849年後半に政府が作られるまで全くの無法地帯だったため、カリフォルニアではリンチや麻薬、殺人などの犯罪行為が横行していたようです。
ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語
ジャンル ドラマ、恋愛
舞台 ニューヨーク、コンコード(マサチューセッツ州)、パリ、他
年代 1862年〜1869年
キーワード
- 小説家
- クリスマス
- 女性の自立と幸福
- 猩紅熱
- 南北戦争
あらすじ
1869年、マーチ家四姉妹の次女ジョーは、ニューヨークで家庭教師をしながら小説の執筆をしている。
長女のメグは隣人の家庭教師と結婚しつつましい暮らしを送っている。
四女エイミーは伯母のマーチとパリで暮らし、友人ローリーと再会する。7年前、知り合ったローリーは、最近ジョーに振られ傷心していた。
……ある日、ジョーのもとに一通の手紙が届く。
体の弱い三女ベスが病に伏したという報せだ。
ジョーはニューヨークを後にしマサチューセッツ州コンコードの実家へ急ぐ。
ポイント
「若草物語」というタイトルを一度は耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか。
1868年に発表されたルイーザ・メイ・オルコット作の「若草物語」は、これまでに映画、ドラマ、アニメ、漫画と様々な媒体で何度も描かれてきた古典的名作です。
グレタ・ガーウィグ監督による「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」は、今までとは視点を変えた構成となっていて、知らない方はもちろん、知っている方でも新鮮な気持ちで楽しめる一作となっています。
回想の多い作品なので、初見で混乱しないように、時間軸を簡単に整理しておきましょう。
メインの時間軸は「現在のジョー」です。ニューヨークからコンコードの実家へ戻ってきて、ベスの看病をします。
第二の時間軸は「過去のマーチ家」です。
南北戦争時代、従軍牧師の父が不在で女ばかりのマーチ家は、(中流家庭の)貧しさを嘆きながらも明るくしたたかに暮らしています。ローリーの登場からジョーがローリー振るまでを指します。
それ以外の時間軸は「直近のメグ」「現在のエイミー」です。
ベスの看病をする直前の、貧しい結婚生活を送るメグ。
そしてパリで伯母とローリー達と過ごす、「現在のジョー」と同じ時間のエイミーです。
基本的には「現在のジョー」と「過去のマーチ家」が交互に入れ替わりながら並行進行し、時折「直近のメグ」「現在のエイミー」が挟まる構成となっています。
現代に通ずるテーマや、過去にアカデミー作曲賞を受賞した作曲家による音楽、アカデミー衣装デザイン賞を受賞した衣装も注目です。
真昼の決闘
ジャンル 西部劇
舞台 ニューメキシコ準州(今のニューメキシコ州)
年代 1867年〜1877年、又は1888年
キーワード
- リアルタイム進行
- 銃撃戦
- 鉄道駅
- 退職
あらすじ
小さな町ハドリービル(架空)にて挙式したばかりの連邦保安官ウィル・ケインと妻のエミイ。
ケインは結婚を機に保安官を引退し、妻とともに町から引っ越す予定だった。
しかしそこへ、「過去にケインが逮捕したフランク・ミラーが釈放され、正午の電車で町へ着く」という知らせが届く。
復讐を企むミラーから逃げようとするケインだったが、保安官の自負と正義感から考え直し、同士を募る。
正午が刻一刻と迫る中、誰も手を貸そうとはしない状態にケインは……。
ポイント
アカデミー賞を受賞した「真昼の決闘」は、フレッド・ジンネマン監督による西部劇です。
のちの西部劇に多大な影響を与え、アメリカ国立フィルム登録簿(1989年創設)の最初の25本にも選ばれました。
それまでの西部劇では、広大な風景や、無法者を倒す絶対的なヒーローといった要素が一般的でした。「真昼の決闘」はそこから一変し、町中を舞台に、死を恐れるひとりの人間としての保安官を描いた点が特徴的です。
主役を演じたゲイリー・クーパーは、映画が制作された1950年代に健康を崩しており、本作の迫力ある演技に繋がったのだろうと言われています。
さて、アメリカの国旗である星条旗ですが、星の数がアメリカの州の数と同じだというのはご存知でしょうか?
独立当時には13個だった星は、州が連邦に加入するたびに増やされていきました。
「真昼の決闘」では星の数が37個なので、1867〜1877年と推測されます。
ただし一部シーンでは1888年の表記も存在します。撮影期間が4週間という短さだったので、無理もないかもしれませんね。
エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事
ジャンル 恋愛ドラマ
舞台 ニューヨーク
年代 1870年代
キーワード
- 社交界
- 上流社会
- 不倫
- オペラ
あらすじ
弁護士のニューランド・アーチャーは、名門の出のメイ・エランドと婚約していた。
婚約発表前のある日、ニューランドはオペラの席で、メイのいとこのエレン・オレンスカ伯爵夫人と再会する。
夫をヨーロッパに残してニューヨークへ帰国したことで社交界から煙たがられるエレンにニューランドは手を差し伸べる。
古いしきたりに囚われない2人は惹かれあうが、因習にがんじがらめの上流社会では叶わぬ恋であった。
ポイント
1920年にイーディス・オートンが執筆した小説を、マーティン・スコセッシ監督が映画化。
史上唯一アカデミー主演男優賞を3度受賞したダニエル・デイ=ルイスが主演をつとめ、メイ役のウィノナ・ライダーは本作でゴールデングローブ助演女優賞を受賞しました。
映画の1870年代アメリカは俗に「金ぴか時代(金メッキ時代)」と呼ばれ、拝金主義が台頭した時代でした。
金ぴか時代では産業が急速に成長し、貧富の差が拡大、政界は汚職にまみれました。
一方では一代で巨富を築く富豪が現れたり、急成長を遂げたアメリカが欧州諸国と肩を並べるに至った時代でもありました。
カウボーイ&エイリアン
ジャンル SF西部劇
舞台 ニューメキシコ準州
年代 1873年
キーワード
- 宇宙船
- キャトルミューティレーション
- 金鉱山
- 南北戦争の英雄
あらすじ
男は荒野で目が覚めた。
くたびれた服を着て、腕に知らない腕輪をはめ、腹には生々しい傷。おまけに記憶もないが、なぜか腕は立つ。
彼を襲った男達を返り討ちにし服を手に入れ、近くの町にたどり着いて腹の傷を治療した。
その直後、町の権力者ダラーハイド大佐のドラ息子と一悶着を起こす。駆けつけた保安官により、男は自分が強盗その他の罪状を持つお尋ね者ジェイク・ロネガンだと知った。
日暮れに連邦保安官へ連行されそうになった時、空の向こうから宇宙船が襲来。圧倒的な戦力差で町を焼き、人々は次々誘拐されていく。
為すすべなしと思われたその時、ジェイクの腕輪が宇宙船を撃墜した。
残された人々はジェイクを頼り、攫われた人の救出へ乗り出す。
ポイント
ダニエル・クレイグとハリソン・フォードが出演する「カウボーイ&エイリアン」。
監督はジョン・ファヴローです。
エグゼクティブプロデューサーのステーブン・スピルバーグは、監督や脚本家へ西部劇の作り方を解説。SFと西部劇がうまく融合したエンターテイメント性の高い映画となっています。
カリフォルニアでの金発見は1848年ですが、ニューメキシコでの金採掘は1828年に始まったといいます。
ニューメキシコがアメリカの領土となる前、まだメキシコの領土だった頃ですね。
その後砂金だけでなく金鉱石も発見されたようです。
「カウボーイ&エイリアン」には118分の劇場公開版と、136分のロングバージョンがあります。ロングバージョンでは長いカットが使用されていたり、シーンが追加されたりしています。全体的なストーリーの変更はありません。
シマロン
ジャンル 西部劇
舞台 オクラホマ
年代 1889年〜1914年
キーワード
- 新聞社
- ネイティブ・アメリカン
- 売春婦
あらすじ
西部開拓時代が終りを告げる直前の1889年。
オクラホマの土地獲得レースへ参加した弁護士・ヤンシーは、元恋人ディクシーに騙され土地を獲得できずに終わる。
その後オクラホマで新聞の発行を始めるが、ヤンシーは元来の放浪癖によって妻セイブラと息子シマロンから離れ、過去最大規模の土地獲得レースへ赴いてしまう。
セイブラはヤンシーを待ちながら新聞社を切り盛りしていく。
ポイント
エドナ・ファーバー原作のシマロンには、ウェズリー・ラッグルズ監督による1931年版と、アンソニー・マン監督とチャールズ・ウォルタース監督による1960年版の2種類のバージョンがあります。
1931年版は白黒で、アカデミー賞2部門を受賞しました。
1960年版は31年版のカラーリメイク作で、原作と31年版のストーリーを大きく脚色しています。先ほどご紹介したあらすじはこの1960年版のものです。
「シマロン」は1889年から1914年まで数年刻みで時が流れていく映画です。
作中で25年も経過する作品なので、土地獲得レース(ランド・ラッシュ)や米西戦争、オクラホマでの石油発見など、19世紀末からのアメリカの歴史が次々出てきますよ。
セイブラの服装も時の移り変わりを感じさせます。
1880年頃に一時的に流行ったバッスル・スタイル(臀部が盛り上がったドレス)、バッスルスタイルが廃れるにつれて巨大化したパフスリーブなど、人物の服装にも注目してみると面白いかもしれませんね。
狂人ドクター
ジャンル ホラー、スリラー
舞台 ボルチモア
年代 1893年
キーワード
- 病院
- 入院
- 洗脳
あらすじ
両親の死により不安定になったイザベルは、医師のすすめでボルチモアにある富裕層向けの療養施設・ローズウッド研究所へ入院する。
順調に回復していくように見えたイザベルだったが、次第に治療は暴力的になり、洗脳と呼べる段階へ至る……。
ポイント
ジェームズ・フランコとパメラ・ロマノスキーによる共同監督作。
1888年に発達障害者向けに設立されたローズウッドセンターを元にした映画です。
信じがたいかもしれませんが、恐ろしいことに実話ベースです。
1937年に精神科医レオ・カナーが報告し明るみに出たこの不正事件は、実際には20世紀初頭に行われました。
ネタバレのため詳細は控えますが、制度を悪用した非人道的な醜聞は当時の新聞にも大きく取り上げられ、制度が見直されるきっかけになったようです。
19世紀のアメリカとは?
18世紀末の独立宣言によって、イギリスの植民地支配から独立したアメリカ合衆国が誕生しました。
19世紀に入ると、アメリカ合衆国は領土の拡大を進めていきます。それに伴って大陸の先住民たるネイティブ・アメリカン(インディアン)とたびたび大きな戦争になりました。
当時のアメリカ合衆国の権力は強く、1830年に制定されたインディアン強制移住法により冬の1300キロを移動させられたチェロキー族は、その道程で約1/4が命を落とす悲惨な歴史辿っています。
1848年に金鉱脈が見つかり人の大移動が起きたゴールド・ラッシュでは巨富を築く者も現れました。
「エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事」の金ぴか時代(1870〜80年代)には、現在にも財閥として存在するロックフェラー、カーネギー、モルガンといった富豪が誕生しました。
19世紀後半にはアメリカを東西に貫く大陸横断鉄道が完成。
第二次産業革命で目覚ましい発展を遂げたアメリカは欧州と肩を並べるまでになりました。
独立宣言の「全ての人間は平等に作られている」という文言は、欧州諸国の白人にとっては成功のチャンスを秘めた言葉でした。
出自や立場にかかわらず一攫千金を夢見ることができたのです。
しかしこの「平等」に、黒人やネイティブ・アメリカンは含まれていませんでした。アメリカ南部では南北戦争まで黒人奴隷は合法でしたし、上述の通りネイティブ・アメリカンはその数を大幅に減らしました。
アメリカの歴史から差別と虐殺は切り離せません。
奴隷制度が廃止されても黒人への差別は続き(黒人取締法による合法的差別など)、ネイティブ・アメリカンは20世紀になるまで市民権が与えられることはありませんでした。
当時に起こったことを知りながら、この時代をテーマにした映画を観ると、また違った見方ができるかもしれません。
世界情勢、価値観、制度など、ストーリー以外の部分でも現在との違いを感じてみてはいかがでしょうか。
映画の中の19世紀アメリカ編。
あなたの興味を刺激する映画がありましたら幸いです。