“わたしらしさ”を変えない投資


投資を始める人や、投資に興味を持つ人が増えています。

日本でも、2022年4月から、高校3年生の家庭科で「資産形成」の授業が開始されたこともあり、新聞各紙や各種メディアでも取り上げられ、話題を集めました。

また、SNS上でも、「フィンフルエンサー」と呼ばれる金融(Finance)系のインフルエンサーも登場し、「金融系のショート動画」も多く再生されています。

実際に大手ネット証券の口座開設数も右肩上がりで増え続けており(下図)、高校で投資を学んだ学生が社会人になれば、投資人口はますます増加していくでしょう。

現状の推移を見てみると、2012年はSBI証券が約240万口座、楽天証券が約130万口座でしたが、2022年はSBI証券・楽天証券ともに、800万口座以上に達しており、2022年までの10年間で3倍以上の増加率を誇ります。

特に、コロナショックが起きた2021年以降の口座数が、前年に比べて100万口座単位で増えており、各社とも2020年以降からの伸び率が高いことがグラフからわかります。

この調子で成長していけば、今から10年後には、「投資はやって当たり前!」、そんな世の中に変わっているかもしれません。

2024年から始まる新NISAや、投資人口の増加から、投資に興味をお持ちの方も多いと思います。
最近ではSNSや雑誌のほか、現実生活での会話の中でも投資の話題が出始めています。

今回は、「投資に興味があるが、何をすれば良いかわからない」という方向けに、初心者でも始めやすい「インデックス投資」をご紹介します。

自分で運用する時代

ところで、なぜ投資に興味を持つ人が増えているのでしょうか?

理由は様々だと思いますが、最も大きいのは「投資の話題がメディアで取り上げられることも多くなったため」だと思います。

そのきっかけは、よく耳にする「老後2000万円不足問題」ではないでしょうか。

この問題は、2019年6月に金融庁の公表した資料が発端となり、事あるごとにメディアにて引用されるようになりました。

夫 65 歳以上、妻 60 歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ 20~30 年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で 1,300 万円~2,000 万円になる。
※出典:金融庁『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告「高齢社会における資産形成・管理」』令和元年6月3日(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf

また現在の日本は、少子高齢化に加え高齢者の長寿化が進んでおり、将来もらえる年金が減少することが想定されます。

更に労働人口に対する高齢者の割合が高まることから、社会保障費の増大リスクが発生しやすい状況にあります。

こうした社会情勢を背景に、国もNISAと呼ばれる非課税制度を拡充し、2022年4月から高校3年生の家庭科の授業で投資の授業が行われるようになりました。

そして、世界的に物価の上昇が起きており、日本でもモノの値段が上がっています。
物価上昇がこのまま続くと仮定すると、現金の価値が相対的に低くなり、現金預金の優位性が無くなります。

こうした「インフレ対策」の運用先として投資が注目されるようになっていると思います。

インフレ対策の例として、
例えば、500円の商品を1万円で買おうとした場合、最大20個まで買えますが、物価が上昇し、商品価格が1000円になった場合は、1万円では最大10個までしか買えません。
1つのモノの価値が現金よりも高くなったため、高くなった分、現金が必要になります。

同じことを「老後資金2000万円」で考えてみた場合、以下のようになります。
以下のグラフでは、今の2000万円の価値が、毎年の物価上昇率に対するX年後には実質いくらの価値になっているかを示しています。

毎年の物価上昇がない場合は2000万円のままですが、毎年1%ずつ物価が上昇すると仮定した場合は、50年後に1200万円程度、2%の場合は700万円程度、3%の場合は400万円程度にまで、原資2000万円の価値は低下します。

日本の政府も目標としては「年2%の物価上昇率」を目指しているため、それを基準にすると、今の2000万円の価値は、50年後には700万円程度、つまり、価値が半分未満にまで下落することになります。

一方で株式投資の利回りは一般的には年3%~5%と言われているため、年2%~3%程度の物価上昇が継続しても、投資によって年1%~2%の利益を出せる可能性があります。
また、物価高により企業業績が改善すれば、株価上昇の恩恵を受けられる可能性もあります。

このように投資によって実質価値の目減りを相殺できることが期待できるため、インフレ対策として活用することも可能です。

日本では将来的に社会保障制度をどの程度維持し続けられるか不透明になっており、自分たちで運用しないと将来必要になるお金を確保できない、という状況になりつつあります。

また、物価高が日本でも進行しつつあり、将来的に継続すると仮定すると、現金のまま資産を保有しておくと、現金の価値が低下することも考えられます。

更にコロナショック後の歴史的な株高によって、FIRE(またはサイドFIRE)と呼ばれる生き方もSNSを中心に注目を集め、資産運用を始める人が増えたように思います。

事情は人によって様々だと思いますが、このような認識の広まりとともに、自分で運用する時代が訪れているのではないでしょうか。

投資は最高の節約法

投資というと、お金がかかるというイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、実は最高の節約方法でもあります。

確かに投資の元本を確保するという意味ではお金はかかりますが、単純に貯金だけで資産を築こうとした場合に比べ、コストを安く抑えられることを期待できます。

複利を用いて計算すると、その効果がお分かりになるかと思いますので、以下のグラフをご覧ください。
グラフでは、積み立ての期間を40年間と仮定し、各利回りで運用した際に、40年後の目標金額に達成するために必要な毎月の積立額を表しています。

年利0%(現金のみ)で運用した場合、目標額2000万円を達成するには、毎月4万円程度、年利1%の場合は3.4万円程度、年利2%の場合は2.8万円程度、3%の場合は2.2万円程度…というように毎月の積立金額に差が生じます。

なお、これを40年間の投資元本に直すと以下のようになります。

年利0% 40年で2000万円が必要
年利1% 40年で約1630万円が必要(約18%削減)
年利2% 40年で約1310万円が必要(約34%削減)
年利3% 40年で約1040万円が必要(約48%削減)

※手数料や税金等を除く

年利3%で運用を行った場合、2000万円の目標金額を達成するために必要な投資元本は40年間の累計で約1040万円、つまり、ほぼ半額で済むという計算が可能です。
更にNISAの拡充により、投資の運用益を一定額まで非課税にすることができます。

投資運用を行うには確かにお金がかかりますが、現金で運用するよりもコストダウン(節約)ができ、効率的に資産を構築できることを期待できます。
 
なお、下記は年利3%で目標金額を達成する場合、毎月の積立額の目安です。
例えば、2000万円を用意したい場合、40年間で2.16万円、30年間で3.43万円、リフォームや教育資金のためにもう500万円ほど(2500万円)確保したいという場合は、40年間で月2.7万円の積み立てが必要になる、などというように判断できます。参考にぜひご覧ください。

「インデックス」って何?

「国も制度を整えている」、「将来の社会保険制度の維持の難しさ」、「現金よりも効率が良い」ということを述べてきましたが、いざ、資産運用を始めようとした際に、様々な金融商品があり、わかりにくいかと思います。

実際に楽天証券のページを見てみると、ページ上部に様々な項目があり、どれから始めるべきか分かりにくいかと思います。

中には、リスクが高く、分析に時間のかかるものもあります。
そうしたものはプロでも成果を出すのが難しいので、仕事、家事、趣味、勉強などで忙しい中、一般人が成果を上げるのは難しいです。

そのため、なるべく、手間がかからず、リスクも低いものを選ぶ必要があります。
こうした要求を満たすものとして「インデックス投資」が挙げられます。

インデックスとは、「指数(INDEX)」のことを指します。
投資の世界で「指数」と言えば、「専門の機関が厳選した様々な優良銘柄の集合体の平均価格」を指します。

代表的な指数としては、日本では、日経平均株価TOPIX、米国では、S&P500やダウ工業平均株価、中国では、上海総合指数やハンセン指数、ヨーロッパでは、ドイツのDAX指数、イギリスのFTSE100指数、ユーロ圏を代表するユーロストックス50指数、以上のような株価指数の以外にも、債券指数やREIT指数など、様々な指数があります。

このように、各国・各地域にて様々な指数が算出されており、このような指数に投資することを「インデックス投資」と呼びます。

指数は、様々な銘柄によって構成されているため、インデックス投資を行うことで、特定の企業の業績や特定の業界の動向に依存しない「分散投資」を行うことができます。

例えば、日経平均株価の場合は、指数(日経平均)を構成する225社すべての銘柄を(少額で)分散購入し、保有し続けることができます。

そして、構成銘柄が値上がりしているときは指数も値上がりし、利益が発生します。
逆に、構成銘柄が値下がりしているときは指数も値下がりし、損失が発生します。

このようにインデックス投資は、指数と連動した運用成果になります。
そして、指数は平均価格を表すので、それに連動するということは、「負け組でも勝ち組でもない中間(平均)的な成果」を狙えるという特徴があります。

また、専門の機関が分析を行い、その中から厳選した銘柄が各指数に採用されるため、自身で銘柄を分析・選定する必要がなく、自然と優良銘柄への分散投資を行うことができます。

このことから、比較的始めやすい投資法と言えます。

実際に始めるには?

まず、証券口座を作成しましょう。

証券口座を作成した後は、いよいよインデックス投資を始めましょう!

私は楽天証券をメインで使っているため、楽天証券の画面で解説しますが、基本的にはどの証券会社でも同じような操作になると思います。

まず、インデックス投資ですが、分類としては「投資信託」に分類されますので、「投資信託」の項目をクリックしてください。

クリックすると、「投資信託トップ」という画面に遷移するため、そこから画面上部にある「投信スーパーサーチ」をクリックします。

「投信スーパーサーチ」をクリックすると、楽天証券にて取り扱われている投資信託の一覧が表示されます。
ここでは「世界の経済は人口の増加とともに成長し続ける」という観点から「全世界株式」という投資信託を選択しています。

画面左側の検索欄に「オールカントリー」というワードを入力して、絞り込みをかけます。

実際にこの画面を出すとお分かりになるかと思いますが、2023年4月11日時点だと、約2600件の投資信託が表示されますので、その中から自分の投資スタイルに合う投資信託を選択する必要があります。

「オールカントリー」で検索を行うと、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」という投資信託が表示されるため、それをクリックします。

その後、その投資信託の詳細が表示されますので、詳細を確認後、注文を行います。
投資信託の詳細の見方についてはこちらをご参照ください。

私の場合は、個別株の運用のために「一般NISA」を利用しているので、ここでは「積立注文」を選択します。

選択すると、引き落とし方法を選択できるので、好みの引き落とし方法を選択します。

続いて積立金額や投資にポイントを活用するかどうかを設定します。
投資にお金をかけすぎて、生活が破綻しては元も子もありませんので、投資は基本的に余剰資金で行いましょう。

次に分配金の運用方法や管理する口座を選択します。

分配金は、基本的には「再投資」で構いません。
管理口座については、税制上有利な「NISA」で運用するのが良いと思います。
※ご存じの方が少ないかもしれませんが、一般NISAでも投資信託の積立設定が可能です。

なお、NISAについては、2024年から新制度が開始し、大きく拡充されますが、2024年になるのを待たずに、今から始めても問題ありません(むしろメリットもあります)。

全ての項目を選択した後は、目論見書の確認に進みます。
目論見書は、その投資信託がどのような運用を行うのか記載されている重要な資料なので、必ず目を通すようにしましょう。

目論見書や約款を閲覧し終わったら、「同意して次へ」をクリックします。

その後、注文の確認画面が表示されますので、問題がなければ下にスクロールし、楽天証券の暗証番号を入力し、「注文する」をクリックします。

これで注文完了です!
あとは設定した方法で、毎月、積み立て投資が行われます。

“わたしらしさ”を変えない投資法

以上の流れで実際に積み立て投資を始めることができます!

インデックス投資は、NISAを活用することで運用益を非課税にすることもでき、また少額で始めることが可能です。
投資対象の選定や分析に時間を割くこともありません。

また、最近では、ポイントによって投資も行うこともできるようになってきており、普段の買い物で使っているポイント(楽天ポイント、Tポイント、dポイント、Pontaポイントなど)でも積立注文を行うことができます。
このように日ごろのライフスタイルや自分のペースで投資を行うことができます。

FXや暗号資産、先物取引などはチャートに張り付き、常に値動き監視を行う必要性があることから、普段の生活も投資を前提としたものに変わりやすいです。

インデックス投資は基本的に、長期・分散・積立で運用する投資方法なので、手間もかからず、大きなプレッシャーがかかることもありません。
まさに、“わたしらしさ”を変えない投資法ではないでしょうか。

現在はインターネットや書籍でも情報が手に入りやすく、「難しい」、「分からない」といった悩みをお持ちの方でも不安や疑問を解消しやすいです。

証券会社ごとに始め方のガイドを公開しているところもあり、始める環境も整っています。
興味をお持ちの方はぜひ始めてみてください。

ご覧頂きありがとうございました!

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